Vol.5
熟練工が伝えたいタオルづくりの厳しさ
IKEUCHI ORGANICベテラン職人のひとり阿部さん。TV番組サラメシでも紹介されたように、若手職人からも慕われ、社内では"あべやん"の愛称で呼ばれています。安い労働力を求めて日本のタオル業界で起きた中国への生産移転なども体験し、そこで見た若手職人のハングリーさと競争社会。その光景と、少人数で行うIKEUCHI ORGANICとの対比や、若手職人に対するメッセージをストレートな言葉で語ってくれました。
生産技術室 阿部

日本と中国で積んだ36年のキャリア
――阿部さんの仕事内容についてお教え下さい
機械の保全みたいになるんですけど。機を織るのから、伸べ繋ぎ(※1)、ああいうのもずっとやってたし、機械の仕組みとか、一応教えるほうもずっと何年も、何十年も(やってきた)。
――タオル業界に入って何年ぐらいですか?
何年やろ。25歳の時からやってるから。(注:キャリアは36年)以前は、中国にも行ってて、そのときは中国人に調整から機織りから、教えてたんで。前やっとった会社で中国(生産工場を)出す言うんで、中国へ行って、そこで6年半ぐらいいて。
――中国のどのあたりへ?
大連。開発区言うて、そこに会社が出たんで機械もって搬入から据え付けまで、糸の作り方から(現地で)教えながら。
向こうやったら自分ひとりじゃない、何をするにしても
――中国と今治では何が一番違いますか?
中国行ってたときは、現場の中で(織機の保全ができるのが)ひとりやったから助けを呼べなかった。ここやったら助けを呼べるやん。向こうやったら自分ひとりじゃないですか、何をするにしても。で、「機械が壊れました」言うたら、自分で直すしかない。ここやったら、機料屋(きりょうや※2)呼ぶとか、いろいろ出来るやないですか。
ここ(今治)やったら困ることがない。中国やったら自分が動かなかったら(織機は)止まりっぱなし。部品が無い言うたら、暇な機械からとってでも動かさないかん。言うたらその間、全部自分の責任やないですか。ここやったら機械壊れました。わかりません、いうたら機料屋呼べば直してくれますから。ここは部品もあるけど、向こうは部品すらないから。折れました、言うたら折れたヤツをひっつけてでも直さないかん。
そこがタオルの街でやってる良さ。んで、もし機料屋さんなくても、ほかの会社が機料屋さん出入りしてるからほかの会社から借りることができる。メーカーから取り寄せて。あんまり困ることがなくなった。
競争して欲しいんやけどね。教え方が悪いんかなぁ?
――今、機織りの若手を指導していて、自分が培った技術を受け止めてくれているという感じはしますか?
どうやろね(笑)
人数少ないやん、ここ。機場(はたば※3)の中は少ない。中国で働いていた頃は、現場だけでも50人いたから、競争があった。ここは競争相手がおらん。同時期に入ったら、あの人よりは、上手くやりたいという思いがあるでしょ、それがない。教えてもあんまり(響かない)言うたら悪いけど。中国やったら、足引っ張ってでも上がりたい言うやないですか。
――イケウチではそこまででもない?
ここはないでしょ。こうした方がいいですよって言っても、ふーんで終わるでしょ、競争がないから。どうなんかな、競争して欲しいんやけどね。教え方が悪いんかなぁ?
――阿部さんが若手に競争心が無いと思っているのは機場の課題ですよね?
教えてはいきよんだけど、なかなかね。競争心があれば、あの人より先に覚えて、上になりたいというのがあるけど、それがなければ日々、どうでもええわで今日終わったらで覚えてくれないでしょ。そういうところを若い子に気持ちを持ってやってもらいたいかな。
大事なことを覚えて欲しいんはあるけど、なかなかなあ。問題はいっぱいあるんやけどね。教えるんが悪いか、覚えるんがわるいか。卵が先か鶏が先かみたいに。
若い人がタオル屋でやっていくなら真剣にやって欲しい
――若手に伝えたいことは?
いっぱい覚えてほしいよ。この職でごはん食べていこう思ったら、もっともっと覚えてほしい。今も仕事ないもんね。30(歳)まわったら仕事ないもんね。働くとこは少ないでしょ。今の若い人がタオル屋でやっていくなら真剣にやって欲しいね。ここでは続かんと思ったら、早くよそ行ってやって欲しい。今の間にどっちかを選んで欲しい。そんな様な気がするね。
――期待することが非常に重大なことですね。
会社がええとか悪いやなしにね。教える立場として、真剣に覚えてほしい。
インタビュー2016年1月
取材・文/牟田口、神尾
フォトグラファー/木村 雄司(木村写真事務所)
【用語解説】
※1:3000~5000本の糸を巻いた巨大な糸巻き状のもの(伸べ)を新しく織機にセットする際に必要な作業
※2:織り道具の生産・販売を行う業者
※3:織機が設置された機織り工場内
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