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Vol.38

想いに応えるべく、チャーミングな人であり続けたい

今治タオルの製造技能を次世代へ継承することを目的に生まれた今治タオル工業組合社内検定。2018年に女性初となる2級合格を果たしたのが、製織(せいしょく)担当の一員として働く近藤さんです。その快挙は地元メディアで「新星登場」とも報じられました。製織の職人として、どんなことを意識して働いているかを、近藤さんに語ってもらいました。

製織担当 近藤

想いに応えるべく、チャーミングな人であり続けたい

知ったかぶりせず、納得するまで質問する

今治本社工場で、製織を担当している近藤です。2012年にIKEUCHI ORGANIC(当時は池内タオル)に入社しました。

職人の世界ならどこも同じだと思いますが、タオルの製織の仕事も覚えないといけないことが沢山あります。タオルの品番ごとに扱う糸や製造工程は変わりますし、織機(しょっき)ごとに操作やメンテナンスの方法が異なります。それらの特徴や違いを頭に入れ、手際よく作業を進め、時には知識や経験を応用していく柔軟さも必要とされます。

私は細かいことを覚えていくのが苦手だと昔から自覚していて、今でも自分の不器用さをもどかしく思うことが度々あります。以前はうまく織ることができたのに、今回は全然うまくいかない。そんなことがしょっちゅう起こってしまうんです。

それでも、IKEUCHI ORGANICの製織担当の一員として、自分の腕を高めていきたいと思い、幾つかのことを意識しながら日々働いています。

ここ近年で意識するようになったことは、「知ったかぶりをしない」ことです。ある程度の経験を積んでくると、良くも悪くも「なんとなく」の理解で出来てしまうことが増えてくるんですが、それではいけないと思うようになりました。

そう思うようになったキッカケとして大きいのが、同じ製織担当として働く阿部さんの存在です。阿部さんは大ベテランでありながら、今でも製織や織機について勉強をしていて、「なんとなく」で終わらせることをしない方です。阿部さんの仕事ぶりにはムダがなく、その手際の良さに美しさすら感じることがあります。

ありがたいことに、阿部さんは質問をさせてもらうと、細かいところまで何でも答えてくれます。せっかく阿部さんが同じ職場にいるのだから、「なんとなく」の理解で終わらせるのではなく、自分が納得できるまで聞いていこう。そして、教えてもらったことを、きちんと仕事で活かしていきたい。そう思うようになりました。

前を向いて、少しずつでも日々成長をしていく

また、私が意識して実践していることのひとつに「しっかりと業務日報を書く」があります。

私たちの会社では、全社員が業務日報を毎日書き、その内容を社内共有しています。以前は簡単な業務報告を記入するだけでしたが、今はビッシリと書くようになりました。その日の仕事を振り返り、どういう手順で作業を行い、どんな学びや発見があったのか。また、阿部さんたちから教わったことも書き記すようにしています。

私にとって業務日報は忘備録のような存在となっていて、何度も読み返したり、加筆を加えたりしています。私は話を聞いて瞬時に理解することが苦手ですし、覚えたことをポッカリと忘れてしまうことがあるので、業務日報をしっかりと書くことで自分の頭の中を整理し、繰り返し復唱していかないと無理だとわかりました。

日報をしっかり書くことをはじめたことの始まりは、上長である川本課長からのアドバイスです。「仕事中にメモを残したりと努力してくれているのは分かる。ただ、学んだことが記憶から抜けてしまった際にすぐに自分で思い出せるよう、メモの内容をノートにまとめてほしい」と面談で言ってくださいました。

この時、小学生の頃に担任の先生が私の日記に書いてくれた言葉をふと思い出しました。「えみこさんの惜しいところは、あとひと息の時に、ひょこっと忘れることですね。頑張り抜く力をつけていきましょう」。この頃から今に至るまで、自分の性格はあまり変わってないのかもなぁと思いました。

知ったかぶりをせずに質問し、学んだことをしっかりと日報に書き記し、何度も読み返す。そして、ポジティブに、明るく、前を向いて、少しずつでも日々成長をしていく。それが頑張り抜く力を身につけることなのかなと、今の私は考えています。

様々な出会いが、自分を大きく変えてくれた

振り返ると、IKEUCHI ORGANICで働いて10年以上経ちますが、仕事への向き合い方は随分と変わってきたように思います。同じ職場で働く方々はもちろん、この会社を通じて知り合えた様々な方々との出会いが、自分を大きく変えてくれたと感じています。

例えば、IKEUCHI ORGANICでは、著名なゲストの方を招いた社内講演会を開いてくれることがあります。どの講演会も心に残っていますが、特に私の意識レベルを大きく変えてくれたのが、大久保寛司先生の講演会でした。

講演会の開催が決まった際に、阿部社長が「その後の人生に大きく影響する内容になるであろうことは間違いない」と全社員に向けてメールを送ったことを記憶しているのですが、その言葉の通りの内容でした。

「自分が『良い』と思う行動を実践している人が身近にいたら、素直に見習う」「日頃の自分の言動やあり方を意識し、自分と向き合う」「感謝の気持ちを感じたら、口に出してきちんと『ありがとう』を相手に伝える」。講演会を聞いて、「私もそんな風に働きたい」と感じたことが、その後の自分に大きな影響を与えていると感じます。

また、お客さまからいただく言葉も大きな励みになっています。私が忘れられないのが2017年に開催された第1回目の『今治オープンハウス』でのことです。会社のWebサイトに掲載されている私の記事を読んでくださった方がいらっしゃって、「実は近藤さんのファンなんです」と声をかけていただいた時は、驚きのあまり言葉を失いました。

リアルな場で言葉をいただくこともあれば、SNSを通じて、お客さまから言葉をいただくこともあります。忘れられない嬉しい言葉が幾つもあって、一つひとつが宝物です。

お声をかけてくださる方々の想いに応えるためにも、製織の職人として、ものづくりに真摯に向き合っていきたい。そして、いつまでも良い記憶に残る代表のようなチャーミングな人であり続けたいと思います。

インタビュー2023年4月
取材・文/井手桂司
フォトグラファー/木村 雄司

製織担当 近藤

オススメのタオル:オーガニック732バスタオル

製織担当 近藤

ヘビーユースの夫を大満足させるプロ仕様のバスタオル。9年洗濯し続けても、タオルメンテナンスに出すと双糸使用のボリューム感がMAXになります 。くたびれない、色落ちしづらい、私の想いもよく吸うタオル。

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