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Vol.37

博物館に飾られるような、歴史に残るタオルを織っていきたい

タオルを織り上げていく工程を「製織(せいしょく)」と呼びます。織機(しょっき)を細かく調整し、繊細な糸をタオル生地に織り上げる製織は、高い技術力が要求される職人芸とも呼べる仕事です。IKEUCHI ORGANICの製織担当の一員として働く越智さんに、どんな想いをもって、ものづくりに向き合っているかを語ってもらいました。

製織担当 越智

博物館に飾られるような、歴史に残るタオルを織っていきたい

自分の手でものづくりをしている感覚を求めて

今治本社工場で、製織を担当している越智と言います。今年で5年目を迎えます。年齢は25歳で、製織担当の中では最年少です。

小さい頃からものづくりが好きで、高校卒業後は製紙会社のパルプ部門の工場で働きはじめました。ただ、大きな工場だったため、パソコンを使ってマシーンを運用したり管理することが主な仕事でした。自分の手でものづくりをしている感覚が薄く、それで他の職を探そうと思うようになりました。

地元の今治に戻って、ものづくりの職を探そうと考えた時に、真っ先に思い浮かんだのがタオルです。私自身、幼い頃から家族で今治タオルフェアに足を運んだりと、今治タオルに慣れ親しんでいたので、タオル職人になるのも面白いかもしれないと考えました。

タオル会社の求人を探すなかで、IKEUCHI ORGANICのことを知りました。タオル職人として働けるのであれば、どの会社でも構わないと考えていましたが、IKEUCHI ORGANICの「赤ちゃんが食べても大丈夫なタオル」という目標を知り、面白い会社だなと感じました。

せっかく働くなら、面白い目標を掲げている会社で頑張っていきたいと思い、入社を決めました。採用面接が終わった後に、工場を見学させてもらったのですが、工場内に響くタオル織機の音が想像以上に大きく驚きました。

タオルが完成に近づくにつれ、いつも心が高揚する

タオル製織の職人にとって、糸切れへの対応は非常に重要な要素です。織機での作業中に糸が切れると、織り目に欠陥が生じ、タオルの品質や外観に悪影響を与える可能性があります。そのため、糸切れが発生した場合、速やかに対応することが必要です。

糸切れを起こさないように織ることができれば一番なのですが、様々な要因によって糸切れは発生するため、一筋縄ではいきません。例えば、工場内の温度と湿度は、糸の品質と織機の動作に影響を与えます。湿度が高すぎると糸は伸縮しやすくなり、乾燥していると脆くなります。そのため、ある程度の糸切れが起きることを前提に織っていく必要があります。

糸切れが起きた際には、切れた糸を取り除き、新しい糸を適切な位置に配置して継ぎ足していきます。入社した最初の頃は、糸を継ぎ足すのに、ものすごく時間がかかっていました。現在は昔と比べるとスムーズに対応できるようになってきたと思いますが、ベテラン職人の動きを見るとまだまだと感じます。熟練した職人は、無駄な動きが一切ありません。

織りが進んでいくにつれ、タオルの形が次第に浮かび上がります。織り目の均一さと美しさに集中しながら、糸のテンションを微調整していきます。そうして織りが完成に近づくにつれ、いつも心が高揚していきます。

私のなかで特に印象深いのは、ビートルズのタペストリーです。大きなタオル生地にビートルズのメンバー全員の顔がキレイに織られていき、はじめて完成した時は「タオル織機でここまで美しく再現できるのか」と衝撃を受けました。

この仕事は、自分が織機の前に立ち、自分で織機を動かしながら、タオルとして完成していく様子を間近で見届けることができるので、ものづくりをしている実感がすごくもてます。ストアを見ると、自分の商品が並んでいるという感覚があります。

IKEUCHI ORGANICのタオルをお客さまが気に入ってくださって、購入してくださる姿を見ると、嬉しい気持ちと誇らしい気持ちが同時に沸き上がってきます。

今治本社工場で私が個人的に気に入っているところは、工場内からファクトリーストアの様子が見えることです。工場内にいながら、お客さまの姿を見かけることができるのは、職人としてありがたい環境だと思います。

自分たちのタオルが博物館に飾られる日を夢見て

私の休日の楽しみは博物館めぐりです。小学校の修学旅行で太宰府にある博物館を訪れて以来、博物館めぐりが趣味になりました。近場にある博物館はもちろん、まとまった休みがあれば、遠方にある博物館にも足を運びます。

いつも自分が携わっているものづくりとはまた違う、古い時代に作られた逸品を見て、ものづくりの楽しさに癒されるのが主な目的です。国や文化や思想が異なると、こんなにも変わるものなのかと、新鮮な驚きを感じることができます。

特に最近は、中南米の古い時代に作られたものが好きです。中南米は天文学的な影響が強くて、アステカの宇宙観や時間観を表す暦石があったり、知れば知るほど面白さを感じます。いつかメキシコにも行ってみたいです。

そんな風に博物館を巡るなかで、自分が携わっているタオルも、その時代を象徴する逸品として博物館に飾られる日がいつかは来るのだろうかと考えることがあります。そうなったら嬉しいし、そういう歴史を作っていきたいとも思います。

少なくとも、IKEUCHI ORGANICが目標として掲げる「赤ちゃんが食べても大丈夫なタオル」を世界初で実現できたら、それは博物館に飾るに相応しい逸品になるのではないでしょうか。そう考えると、この目標を達成したい気持ちが一段と高まります。

とはいえ、タオル職人としての技術も経験もまだまだなので、まずは自分自身をもっと磨いていかないといけません。自分ができることをしっかりと増やしていきながら、歴史に残るタオルづくりに貢献していきたいです。

インタビュー2023年3月
取材・文/井手桂司
フォトグラファー/木村 雄司

製織担当 越智

オススメのタオル:Beatlesスポーツタオル『ABBEY ROAD』

製織担当 越智

Beatlesのイラストが格好いいので気に入って使っています。

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