お風呂上りはこれしか使わないんです。ボリュームがしっかりあって、大きさとかも含めてすごく気に入っているんです。
Vol.9
食べられるタオルへ導く仕事人
製織工場として世界でも例のない食品安全マネージメントシステムISO22000認証を取得したIKEUCHI ORGANIC本社工場。その認証取得の陣頭指揮を取ったのが曽我部さん。タオルの製品開発、設計の職を経て、社内システムの構築なども兼務するなどIKEUCHIの「最大限の安全と最小限の環境負荷」というスローガンを実現させる仕事人です。インタビューでは理路整然と物事の本質に迫る語り口で質問に答えてくれました。
業務推進室 室長 / ISO管理責任者

本当に取れるんかな? ISO22000への挑戦
――ISO22000を取得したいと社長に言われたとき、どう思いましたか?
本当に取れるんかな? というのが正直な印象。社長が言う様に綿花は食べない野菜で、そういうところから言うと(ISO22000が)一番マッチしているかなと。ただ、取得に向けてスタートするときに、一番問題なのは衛生面でした。例えば食品工場で言うと、クリーンルームがあったり、建物の導線が決まっているんですよね。クリーンルームに行くまでにエアーシャワーがあったりとか。タオルの業界というのは、そういうところ(食品工場並の衛生設備)は全く無いんですよね。最初はタオルと食品はイコールにならないじゃないですか。(タオルは)食べれないでしょ。食べるという前提で考えるのはまったくアレ(ナンセンス)だし、食品をタオルに置き換えると、どうなるか考えてもなかなか結び付かない。
――まあそうですよね(笑)
タオルが食品会社の認定であるISOをとった事例がないので(認証機関の人は)かなり困惑してました(笑)。認証範囲といういうのがあって、どういう風にすれば、ここの認証範囲に汲み取れるかというのがあって。そのときにコンサルの先生から(認証範囲について)話しがあって、社長とも何度かやりとりして。最終的に今のかたち(フーズファブリックという概念※1)に落ち着きました。
――IKEUCHI ORGANICのISO22000取得は、テキスタイル業界初、ISOの歴史の中でも無い異例のことですよね、今後も継続できるのかという不安はないでしょうか?
これがまた、毎年更新して行くんですけどね。3年に1回大きな更新の審査があるんですけど、積み重ねていって、その都度更新しないといけないですね。
――食べれるタオルの話はもう出ていますか?
社長は言うだけやからね(笑)。でも、食べる繊維ができれば(実現可能)。実際にタオルとして織れて、口の中に入れて溶けないといけないから。
――ほんとにタオルを食べるつもりですね、考えている設定が(笑)
「間違って赤ちゃんが口の中に入れてしまっても安全ですよ」と社長はそういう言い方なんですけど、結局はそういうこと(胃で消化できるタオル)ですよね。
自分の子どもみたいで。思い入れは、どれもあります
――入社されて12年とお聞きしましたが、その中で印象的だった出来事を教えて下さい
入社してから、オリジナルのタオルには大体関わって来たことです。僕が入社したときに、すでにあったのは前のストレイツ、オーガニック120とふたつだけだったんです。僕が入社してしばらくしてから、アメリカの展示会用に作ると言うんで、オーガニック316の開発を始めた頃だったんです。去年、ISOの責任者になるまでは、ずっとそういう商品開発に関わってきたんで、ここにある商品は、社長と同じ言い方をすると、自分の子どもみたいで。思い入れは、どれもありますね。
――今日お持ち頂いた思い入れのあるタオルは何になりますか?
ふたつあるんです。ひとつはコットンヌーボー。 僕が使っているのはバスタオル。お風呂上りはこれしか使わないんです。ボリュームがしっかりあって、大きさとかも含めてね。すごく気に入っているんです。それ以外で好きなのはストレイツオーガニック。基本的にはIKEUCHIのタオルは後染めなんですけど、これは先染めなんです。先染めの柔らかさ、風合いは後染めとちょっと違う感じなので気に入っています。先染めの風合いは、後染めの風合いとは違うというか、これはオーガニックやなぁという感じがするんですよね。オーガニック120もいいんですけど(ストレイツオーガニックの方は)すごく柔らかい感じ、薄いんですけど、コシがあるというか。そういう部分がいいなぁと思いますね。
――コットンヌーボーは初代の頃から愛用しているのでしょうか?
そうですね、2011年のが未だに現役です。毎年違う綿で糸を作っているんで、それぞれの年によって風合いや仕上がりが違ってくる。気に入っているのは初期の2011年のが思い入れありますね。
――コットンヌーボーは、最新の2016が完全オーガニック仕様(※2)になりましたが
完全オーガニックになったのは良いことやと思いますね。商品に関してはそういう形にしていって社名にふさわしい商品になったんじゃないですか。次も楽しみですね、新しい商品が開発されてこそIKEUCHI ORGANICらしいというか。
池内のタオルは、“何々しにくい”というのが特徴なんです
――今夏発売予定の新作、オーガニック960の話は聞いていますか?
何となくは開発の矢野主任から聞いています。織りにくいとかあったみたいですね。池内のタオルは織りにくいとか、“何々しにくい”というのが特徴なんです(笑)。開発、設計から携わっていると、とにかく難しいというか、どうしたらこうなるの? とか、そういうことを考えながら今、矢野主任は開発設計していると思うんですよ。例えば現場から織りにくいという声が出たら、じゃあどうしたらいいのかと考えて、その他にも社長からは色々言われて…。
――この試行錯誤がIKEUCHI ORGANICの品質の高さにつながりますよね。
そうですね。ある種、社長のこだわる部分と、技術的なこだわりとを上手くまわして社長のイメージするものより、良いものを創らないと社長も納得しないですしね。必ず社長は自分で使ってみてこれは良いとか、言いますからね。社長のイメージ、こういう感じにしたいというのを形にするのが(開発の)仕事やと思います。
今までタオル業界になかったものを作る
――IKEUCHI ORGANICで今後どんなことをやりたいですか?
今はISOのことをやっていますが、それでもモノづくりには関わりたいというのはありますね、960の後とかね。IKEUCHIの定番になるような、今までタオル業界になかったものを作るとか、そういうのができれば良いなと思っています。
――具体的なイメージはありますか?
今のところ無いんですけどね。大体織物っていうのは今世に出ているものが全てやと思いますが、素材や織り方の組み合わせで新しく見えたりするんです。今、多重ガーゼが流行っていますけど、次また何か出て来ると思います。そういうのを先取りできるような感じになればいいかなと思っています。
インタビュー2016年1月
取材・文/牟田口、神尾
フォトグラファー/木村 雄司(木村写真事務所)
注釈
※1:IKEUCHI ORGANICの製品は食品でなく、食にまつわる織物、編み物製品であるため、食品安全マネージメントシステムにおける食品を「フーズファブリック」と置き換え定義した
※2:コットンヌーボー2016から、刺繍糸、ミシン糸まで使用している糸を全てオーガニックコットン100%のものを使用に変更
イケウチのヒト
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ものづくりの現場とお客様の架け橋となってIKEUCHI ORGANICのファンを広げていく。法人営業担当の笹野さん。
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