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スイスREMEI社から学ぶ、ソーシャルビジネスの課題と希望 #3阿部社長からヘルムート氏、ヴィヴェク氏に質問

2017.04.21

目次

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2017年3月24日開催
スイスREMEI社から学ぶ、ソーシャルビジネスの課題と希望 より

REMEI.AG CEO Mr.Helmut Halker
bioRe India Ltd.CEO Mr. Vivek Rawal
阿部哲也(IKEUCHI ORGANIC株式会社 代表取締役社長)
モデレーター:大室 悦賀(京都産業大学経営学部教授『サステイナブル・カンパニー入門』著者)
(以下ヘルムート氏、ヴィヴェク氏の発言は、同時通訳による日本語の書き起こし)

本日の登壇者について

阿部:質問に移る前に、事前の質問事項をかなりお受けてしておりまして、たくさんの質問をいただきました。これらの質問に全てお答えはしますがこちらの会場では時間制約上、この場でお答えすることはできませんので、後日私たちのWEBに全部、Q&Aというカタチで開示をさせていただきます。

今日はみなさんからいただいた質問の中から3点、私のほうで選んで、普通聞けないだろうなという質問をピックしました。

この質問にお答えいただければ大体の全体感はおわかりいただけるのかなと思っています。その前に、いろいろとREMEIとかbioReとかパノコとか、GMOとか、こういう言葉が乱立していてみなさん混乱されているのでは? と思いまして老婆心ながらもう1回説明させていただきます。

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▲左:ヘルムート氏 右:ヴィヴェク氏

阿部:まず、ヴィヴェクさんは生産者、コットンを生産していますね。インドの方です。bioReプロジェクトは、社旗的なフェアトレードだったり生産にまつわる全てのことをやっているプロジェクトの名前です。インドとタンザニアにあります。タンザニアの責任者も今日来る予定だったんですが、健康上の理由で来ることができず、第2部でSkypeでつなぐ予定になっていますので、お楽しみになさってください。

こちらのヘルムートさんはスイス REMEIのCEOです。REMEIはbioReプロジェクトで生産した糸を世界にデリバリーされている会社です。REMEIとbioReプロジェクトをつないでいただいた一番キーの会社がパノコトレーディングになります。(IKEUCHI ORGANICは)パノコさんから糸を仕入れている関係でございます。

基本的に繊維の場合は専門商社さんから入れるものですから、そういった商慣習にしたがってパノコさんと私どもが取り組みをしております。ですから、REMEIさんと出会いのきっかけをいただいたのがパノコトレーディングさんになります。ここらへんの関係地をもう1回ご理解いただいて、これからの回答を聞いていただけるとより理解を深められるかなと思います。

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IKEUCHI ORGANICはなぜ、REMEIを選んだのか?

阿部:あともう1点。REMEIと我々が出会った、REMEIを選んだ理由。どういった観点でREMEIにしたんですか? というご質問を頂戴しておりました。これはさきほど申し上げたパノコトレーディングがあって、我々はREMEIと出会うことができたことなんですが、さかのぼること今日は代表の池内もおりますので、その当時の関係ができあがった頃の話をちょっとしていただいてから質問に移りたいと思います。

池内(IKEUCHI ORGANIC 代表):うちが自社ブランドでオーガニックコットンをやろうと決めたのは1998年。スタートしたのは1999年3月。18年前に(オーガニックコットン100%のタオルを)発表したんですが、この時点でうちがやったオーガニックコットンはすべてのノウハウをいただいたのはデンマークのノボテックスという会社です。

ノボテックスは今のところ世界で一番最初にオーガニックの商品を作っています。こことはたまたま飲み友達だったので、池内がオーガニックをやるなら全部ノウハウを教えてやるよということで教えてもらったときに、日本の認定オーガニックは認めないと、あれはオーガニックではないと(ノボテックス側に言われた)。あんな糸をオーガニックといっているのは日本だけだと。自分たちはオーガニックとは言わない、使う限りはEU規格のオーガニックコットンにしないとダメということで、そのときに探して行き当たったのはパノコさん。

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池内:そのころは我々はペルー綿でスタートして、ペルーがアメリカ、次にインドになりタンザニアにもってなって、インドになった段階でbioReですね。で、ある日気づいたのが使っている糸がREMEIの糸しか使っていなくて、よくパノコからたまにはREMEIにあってみたら? 現場(インド)に行ってみたら? と言われてたんです。でもオーガニックの現状を知ってる身からすると怖くて現場は見られないんです。絶対(非オーガニックな綿と)混ざってるんじゃない? と不安だらけで現場には行かない考えだったんですが、ある日RMEIに行って、めちゃくちゃピュアでしょ? なんでこんなピュアな人たちと知り合ってしまったのかと。知ってから買うならわかるけど、自分たちの使っている綿花が100%になってからREMEIの実態を知ったので、ほんとに驚いています。

こんないい糸なので最高のタオルを作らないといけない。おとといも事前の打ち合わせでなんでヨーロッパはあんないい糸を使っているのに、つまらない商品をつくるのか。もっと真面目に作れないのかと。原材料だけに満足しているメーカーが実はとても多くて、原材料なんていうのは商品にとってみれば一部なので。こんなにいい原材料を供給してもらっているんだから徹底的にいいものをつくりたいよね、と思ってやっています。

bioReには、年間どの程度維持費が必要ですか?

阿部:ありがとうございます、これが全体像です。その前提で質問を3つします、ひとつ目ですね。”bioReの取り組みを維持するためには年間どの程度費用が必要ですか?”という質問です。先ほど説明があったように、フェアトレードであったり、医療用の車の派遣であったりインフラの整備だったり、教育だったり、全部含まれています。これを維持するためにいくらかかるのか? ということが我々も把握していなくてご質問をいただいたので、ヘルムートさんお願いします。

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▲photo REMEI AG / PANOCO ORGANIC COTTON

ドルベースでお話しをすると年間2000万ドルかかります

ヘルムート:その質問がくると実は思っていたんですが、もちろんそのbioReのプロジェクトが持続するためにはいろいろな努力をしているわけです。持続可能なプロジェクトをし、より質のいい製品をつくるためにたくさんのお金を払っています。そうすることによって農家の方々が無料でサービスを受けることができるようにしています。ですのでそのような構造をつくるために、私たち独自の商品管理をするシステムを作りますし、GMOかGMOでないか沢山のテストをするのにもお金がかかります。そしてGOTSの認証を8000くらい持っているんですが、それらの認証を維持するお金もかかります。それに加え農家の方々に15%のプレミアムのお金を払った上で買取をするということで実は大変お金がかかります。ドルベースでお話しをすると年間2000万ドル(約21億円)かかります。半分以上が農家の方々に払われているという構造です。

農家の生活向上を果たすための投資

ヘルムート:たとえば1年間に4000トンをつくるということになると、買取をしないといけないんですね。難しいのが例えば4000トン生産できたとしても2000トンを使って製品をつくる場合、残りの2000トンは多すぎてしまいます。そうなった場合在庫になってしまいますが、安く売ってしまって、農家の人に払う値段を下げることもできないので、大変コントロールが難しいです。ですので、数字ばかりになりますが私たちのプロジェクト自体が持続可能に動いていくために、150万ドル(約1億6千万円)くらい毎年かかります。大変な額をかけてやっているんですが、実際に農家の方々の生活が向上するのを目の当たりに見ていますし、プロジェクトひとつひとつを訪ねてみると、きちんと回っているのでそれだけの資金をかける価値があるのかなと思います。そして農家の方々の健康を守ることが持続可能なプロジェクトにつながると思いますし、有害でないものを作り続けるということが大切になると思います。

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bioReはどうしてラベルを付けないのか?

阿部:ありがとうございます。時間も迫っていますので2問やる予定でしたがあと1問にします。

我々も取引先さんに商品を設営するときに原材料がフェアトレードで、あと遺伝子操作してませんよと申し上げると、認証を出してくれというお話しを頂戴します。bioReさんのフェアトレードの取り組みや遺伝子そうさしてないというものに関して、認証は出るんですけど、ラベルはない。で、「ラベルがないとダメだよね」という評価を多々いただいて、私営業をやっていたもので、これがネックでbioReさんはどうしてラベルつけてくれないのかなと思ってまして、これはどうして? というのも教えていただけないかと思います。

ヴィヴェク:その理由はいくつかありますが、bioReは私たち独自の社会的認証システムを持っています。消費者の方々はフェアトレードのレベル(国際フェアトレード認証ラベル)を知っていると思いますが、申し上げたいのはフェアトレードと認証されている商品よりも私たちがつくっているというのはもっと、フェアであること、オーガニックであることを知ってほしいです。例えば私たちがつくっている糸をイケウチさんに出していますが、それを製品にするわけですよね。そのなかでbioReとフェアトレードのものを比較して考えてみたいと思います。価格のことですがフェアトレードで認証されているものは国によってそれぞれの価格が変わってきます。私たちはどういうふうにしているかというと、その日その日、買取をする日の価格を導入しています。フェアトレードの商品はプレミアム、追加の価格を足さないで買取をしているところに対して、私たちは市場の価格に対して15%上乗せした価格で買取しているわけです。

ラベルにつける認証よりも、もっともっとやっている

ヴィヴェク:私たちのやっていることは綿を生産していて、そこから入ってきた価格によって社会的なプロジェクトや活動をしていますが、その綿を売ったことによる価格に多少差があったとしても、社会的活動は同じ規模で維持をしているんです。また違う側面からいうと買取保証を私たちはしているわけですが、フェアトレードラベルがついているものはそれがありません。カーボンニュートラルをやっていますけど、そうではないパターンです。ですので、フェアトレードのラベルにこだわるのは私たちはおかしいと考えています。ラベルにつける認証よりも、もっともっとやっているので、私たちはフェアトレードのラベルを追求してそれをつけることをやめたんですね。その代わり、FLO( Fairtrade Labelling Organizations International、国際フェアトレードラベル機構)にきてもらって監査をしてもらうということはしています。ですので、みなさんも理解してご説明していただきたいんですが私はあえて、ラベルにこだわることをやめてそれ以上のことをやることとして追求するという選択をしたことをご理解ください。もしもそれが本当にどうなっているんだと思いましたら、インドにきてぜひ見にきてください。言葉だけでなく、目で。ありがとうございます。

阿部:ありがとうございます。私的には腹落ちしました。

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大室:会場の方からもひとつふたつ、ぜひ聞いてみたいという方はぜひ挙手をお願いします。

GMOが混合したものについては買取しない

来場者質問:全くタオルについて知らないんですがフェアトレードと買取保証に興味がありまして、さきほどGMOが混合する場合があり、要因も様々ということですが買取保証というのはGMOが混合する要因とか段階によって変わるものなのでしょうか? 要するにGMOが混合したものについては買取はしないのでしょうか?

ヘルムート:さきほどもヴィヴェクさんの取り組みをお話しさせていただきました。これでもかこれでもかというくらい、テストがあるというお話しをしまして。それはGMOと混ざってしまうこと、GMOの作物を育ててしまうことの脅威からきているわけなんです。ですので、たくさんの農家の人たちのガイドラインを設定して、すべてのGMOのコットンを買わないようにしています。ですので答えとしては、テストをしてGMOのコットンであった場合は買取をしません。

大室:ありがとうございます。最後におふたりと阿部社長からショートメッセージをいただいて終わりにしたいと思います。内容についてはみなさん、あるいはIKEUCHI ORGANICに対してもっとこうしろとかメッセージをおふたりからいただいて、それを受ける形で阿部社長に答えていただいて終わりにしたいと思っています。ではヘルムートさんからお願いします。

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「Buy towels!」

ヘルムート:「Buy towels!」(本人の発言ママ、以下通訳)タオルを買ってくれ!(会場笑)これが一番のメッセージかと思います。もっといい言葉を見つけました。さきほど池内がつくっている製品を目にしましてタオルを買えといってしまったんですが、冗談ではなくてすごくいいコンセプトを発見しました。タオルをワインのように認識して買おうというプロジェクトを池内さんがやってらっしゃるそうです。タオルは綿からできているのでワインと同じように農作物からできているんですよね。食べたり飲んだりするものは農作物からだと考えやすいですが、タオルになるとそこから切り離して考えてしまいます。綿は農作物なのでぶどうと同じようにその年によって、できが良いとき悪い時、すっぱいときなど毎年違うと思います。タオルもワインと同じように年ごとの綿の違いのできを楽しめるそういう認識を持つ消費者であってもらいたいし、それを使う方々であってほしいと思います。それで目を閉じてさわってみたんです。そしたら2017、16、15年と本当に違いました。そしてその違いがわかって感動したのでタオルを自分の家族のために20枚買いました(笑)。それがあなたがたへのメッセージです。

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いいことをちゃんと持続していく

ヴィヴェク:農家を代表してメッセージをおつたえします。農作物をつくることは、私たちの人間の未来を作ることだと思います。それはお母さんがこどもにすることだと思います。母親というものはこどもに毒を与えないですよね。お母さんがからだの中に毒をもってしまっていてはこどもにもその毒が移ってしまいます。ですので、持続可能性、いいことをちゃんと持続していくということは、オーガニック農法による作物を作ること、そのサイクルから始まっています。でも、オーガニックコットンをつくっている、オーガニック農法をやっているコミュニティはすごく小さいです。人工的、化学的なものを使ってやっている農法に比べるとずっと小さいです。ですので私たちがパノコさん、池内と作り出したような強いパートナーシップ、絆がすごく必要です。そしてみなさんのような消費者やリテーラー(小売業者)の方にこの動きがどんどん、広がっていきます。ありがとうございます。

社会はつながり

阿部:ありがたすぎることばを頂戴しまして、何を申し上げていいのかというのはちょっとさておき、リッキー、ちょっと前にきてもらっていいですか? (来場していた、コットンヌーボーデザイナー佐藤利樹氏を壇上に呼び入れる)ヘルムートさんが驚いたコットンヌーボーのアイデアは彼が考えました。

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阿部:2011年からこの取り組み(コットンヌーボー)をやっているんですが、ヘルムートさんとは5年前に同様のイベントをやっているんですが、そのときはいらっしゃらなくて。で、我々は今日こんな金曜日の中、集まっていただいたお客様に支えられてここまできました。それだけじゃなくて生産いただいているREMEIさん、ご縁いただいたパノコさんあって今、我々があります。やっぱり社会はつながりなので、このつながりをいかに維持できるかにかかっていると思いますのでこれからも暖かい目で見ていただければと思います。

ありがとうございます。

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